それぞれの個性を知ればもっと楽しくなる 温泉法で定められている泉質には大きく分けて10種類あるが、長野県にはそのすべてが湧出している。人間でいえば一人ひとりの性格が違うように、泉質も個性豊か。また、同じ泉質に分けられていても、源泉に含まれる成分量の違いで特色も変わってくる。 温泉分析表に記載される泉質で、最初に表記されるのが最も成分が多く、順番ごとに成分量は少なくなると考えてよい。無色透明なイメージが強い単純温泉でも、成分は単純ではない。単純温泉は水温が25°C以上あり、含まれている成分が塩化ナトリウムや炭酸水素ナトリウム、硫化ガスでも良いのだ。単純温泉は、名前が「単純」だが、その含有成分から見るとさまざまな泉質があり、濃度が低いからといって単純温泉と思うのは、いささか「単純」すぎかもしれない。 温泉は、まさに大地がもたらした神秘。さまざまな科学的作用が働き白濁したり、緑や赤茶などさまざまな色を表す。また効能効果についても専門家でもまだ解明できていないことが多々あるようだ。 1.単純温泉 肌ざわりがやわらかく、クセのないのが特徴で、長野県では塩化物泉についで多い泉質。含まれる成分は豊富だが総含有量が少ないため、肌への刺激も弱く、神経痛やリウマチ性疾患、骨折や外傷など、効能はオールマイティで幼児からお年寄りまですすめられる。飲むと、胃炎や通風にも効果的。 ●泉質別適応症 浴用：自律神経不安定症、不眠症、うつ状態 2.塩化物泉 日本に多く見られる泉質で、以前は食塩泉と呼ばれていた。塩分が主成分となっているため、飲むと塩辛い。塩分特有の殺菌効果で、湯気を吸って気道を浄化し、呼吸疾患の治療に使われることも。外傷や皮膚炎、神経痛のほか、弱塩化物泉の場合は、飲用すると便秘や消化器病にも効果がある。 ●泉質別適応症 浴用：きりきず、末梢循環症、冷え性、うつ状態、皮膚乾燥症 飲用：萎縮性胃炎、便秘 3.炭酸水素塩泉 鎮静作用や炎症をおさえる重炭酸土類泉と、肌を美しくする重曹泉の２種類に分かれる。重曹泉は、水分を引き込んで保湿性を高めるため「美人の湯」とも呼ばれ、浴後の肌のしっとり感は格別。飲用することで胃酸を中和し胃の活動をおさえるので、慢性消化器病にも効果が認められている。 ●泉質別適応症 浴用：きりきず、末梢循環症、冷え性、うつ状態、皮膚乾燥症 飲用：胃十二指腸潰瘍、逆流性食道炎、耐糖能異常（糖尿病）、高尿酸血症（痛風） 4.硫酸塩泉 硫酸カルシウム、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウムの３つの成分に分かれる。硫酸カルシウムには鎮静作用があり、傷みやかゆみをやわらげる効果が、硫酸ナトリウムには保温効果がある。また、日本では稀少成分の硫酸マグネシウムでは、血圧を下げたり動脈硬化予防の効果が期待される。 ●泉質別適応症 浴用：きりきず、末梢循環症、冷え性、うつ状態、皮膚乾燥症 飲用：胆道系機能障害、高コレステロール血症、便秘 5.二酸化炭素泉 成分中に炭酸ガスを含んでいるため、入浴すると全身に細かい気泡が付着する。温度が上がると炭酸ガスが気化するので、冷泉が多いのも特徴。皮膚を通過する炭酸ガスが血管を広げて血液循環をよくするので、末消循環障害に効果がある。また、心臓病、動脈硬化、高血圧症にもよい。 ●泉質別適応症 浴用：きりきず、末梢循環症、冷え性、 飲用：胃腸機能低下 6.含鉄泉 鉄泉と緑ばん泉と呼ばれていたものが１つになって含鉄泉になった。鉄を豊富に含むため、源泉は無色透明だが、空気に触れると酸化して赤褐色になる。効能は更年期障害や貧血、リウマチなど。飲泉後にお茶を飲むと、タンニンと結合して歯が黒くなる場合があるので注意が必要。 ●泉質別適応症 飲用：鉄欠乏性貧血 7.酸性泉 欧州ではほとんど見られないが、日本各地に多い泉質。多量の水素イオンを含有し、強い酸性を示す。そのため殺菌力が高く、水虫や湿疹など慢性的皮膚病には効果的。ただ、肌の弱い人は湯ただれをおこすこともあるので、入浴後には真水でよく洗い落とすことをおすすめしたい。 ●泉質別適応症 浴用：アトピー性皮膚炎、尋常性乾癬、表皮化膿症、耐糖能異常（糖尿病） 8.含よう素泉 温泉水1kg中によう化物イオン10mg以上含有するのが「含よう素泉」。2014年に新しく誕生した泉質で、非火山性の温泉に多く、放置すると黄色く着色するのが特徴。殺菌作用が高く、気になるコレステロール値を下げたり、動脈硬化の予防効果もある。長野県内では、2箇所のみのとも貴重な泉質。 ●泉質別適応症 飲用：高コレステロール血症 9.硫黄泉 単純硫黄型と硫化水素型に分かれる。硫化水素には毛細血管や冠状動脈を拡張させる作用があり、血行を促進して保温効果を発揮する。動脈硬化や高血圧症に効き目があるといわれるのはこの特質のため。硫黄臭といわれる独特の匂いがあり、空気に触れると白濁するのも特徴。 ●泉質別適応症 浴用：アトピー性皮膚炎、尋常性乾癬、慢性湿疹、表皮化膿症 飲用：耐糖能異常（糖尿病）、高コレステロール血症 10.放射能泉 微量のラジウムやラドン、トロンなどの放射能物質が含まれている泉質。これらの成分は、入浴や吸入することで皮膚や気道から体内に取り込まれる特徴があり、糖尿病や通風、リウマチ、尿血石などによいといわれる。そのため、昔から療養に適した温泉といわれ、別名は「万病の湯」。湯は、無色無臭でなめらか。 10.放射能泉 ●泉質別適応症 浴用：高尿酸血症（痛風）、関節リウマチ、強直性強直性脊椎炎など