長野県の県庁所在地で人口約３６万人を誇る長野市。国内外から多くの参拝者が訪れる善光寺やパワースポットとしても人気の戸隠神社とその参道の杉並木、真田十万石の松代・武家屋敷など、史跡・文化財も多い。ウィンタースポーツも盛んで、長野冬季オリンピック・パラリンピックの舞台にも。東京から約90分で、豊かな文化と自然と出会え、山岳リゾートの玄関口として注目が集まる長野市の魅力について荻原健司市長にお話を伺った。 市内各地を訪れて、眠る市の魅力を発信したい ―映画「十一人の賊軍」で俳優デビューした感想はいかがですか。 荻原市長（以下・荻原）：楽しかったですよ。これをきっかけに松代のPRにつながればうれしいです。映画の舞台は幕末・明治維新で、松代は当時の街並みや風情を見事に残していて、武士姿で歩くと幕末にタイムスリップしたようでした。全国をまわっても、当時の街並みをあれほど残している場所はほかにはないと思います。長野市としても映画やドラマの舞台を巡る「聖地巡礼」の地になれるよう、取り組んでいきたいですね。

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  松代城跡
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  真田宝物館
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  文武学校
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  真田邸

―観光地としてのポテンシャルを感じたようですね。 荻原：松代のほかにも、戸隠や鬼無里、飯綱高原など、魅力的な場所はたくさんあります。眠ったままで生かし切れていない観光資源を掘り起こしていきたい。その一環で、私自身が直接地域を訪れる「まちづくり探訪」と題した市公式YouTubeを始めました。第1弾は鬼無里地区。紅葉の名所・奥裾花大橋や市の天然記念物になっているブナの原生林が広がる奥裾花自然園を訪れました。地元の人にいろいろと話を聞き、壮大な自然の全てが「市の宝」だと実感しました。 ―今後の探訪予定はどうでしょうか。 荻原：より効果的な時季を考えながら実施していきたいと思っています。2024年にユネスコの無形文化遺産に登録された「伝統的酒造り」にちなんで、酒どころでもある長野市の酒蔵や果樹園を訪れるなど、魅力的な場所だけではなく、文化に触れてみたり生産者に会いに行ったりしてみたいと思っています。

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  戸隠スキー場　提供元：長野市
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  戸隠キャンプ場　提供元：長野市
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  飯綱高原
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  長野市公式YouTube「まちづくり探訪～鬼無里編～」より
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  奥裾花大橋
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  奥裾花自然園
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  鬼無里は日本有数の水芭蕉群生地として知られる。5月が見頃

海外では高い知名度、潜在力。世界のNAGANO ―国内外でのトップセールスで感じることは。 荻原：冬季オリンピック・パラリンピック開催地としての知名度の高さを感じます。ただ、NAGANOの名前は知っていても場所は知られていない。地図を広げて、「東京から新幹線で９０分」と示して、豊かな自然や多様な食文化、多くの寺社仏閣、良質なパウダースノーなど、説明を進めると、驚かれます。「東京からそんな近くにあるのか!」と。先日、タイを訪れた際には、善光寺のほかに、タイでは見られない雪にも関心を寄せていました。世界各地の消費者（旅行者）目線に立ってPRしていくように心がけていきたいです。

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  タイでのイベントの様子　提供元：長野市
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  提供元：長野市

―改めて、長野市の魅力は多いようですが。 荻原：観光スポットのほかに、フルーツやお酒、食事なども魅力的な観光資源になりますね。選択肢は多い方が、消費者（旅行者）にとってはいいのではないでしょうか。ただ、課題もあります。善光寺が圧倒的に長野市観光の中心になっており、周辺エリアへの回遊性が少ないようです。発信の仕方や、回遊ルート・プランの整備など、改善点を探っています。また、インバウンドを意識した典型的な日本旅館や、富裕層向けのラグジュアリーホテルなど、宿泊施設にもう少し多様性が出てくることを期待しています。

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  リンゴ
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  シャインマスカット
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  川中島白桃
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  長野市はお酒や食べ物など美味しいものの宝庫

―海外資本の進出が注目されていますが。 荻原：東京から近い３６万人都市に、これだけの自然がある。冬には雪が降り、その量・質ともに素晴らしい。これは世界的にも珍しい、貴重な環境で、世界の人が注目しています。その証拠に、長野市から妙高市（新潟県）にかけてリゾート開発を計画しているシンガポールの不動産ファンドは今回、数千億円の投資を予定しています。地域に根を張った計画になるように、関係する自治体と広域的に盛り上げていこうという機運になっています。 「都市ブランド」のイメージどおりの移住環境を整えたい ―長野市の移住人気についてはどう考えていますか。 荻原：長野県は移住先として大変人気があり、常に上位に選ばれています。私自身、群馬県出身ですが長野市に３０年住んで感じるのは、「暮らしの豊かさ」。ゆったりとした時間が流れ、健康長寿の県らしく、健康的に生活しています。果物もリンゴ、シャインマスカット、モモなど、どれもフレッシュでおいしくてリーズナブル。一方で、３６万人都市として、大学などの教育機関や病院、スーパー、交通インフラなども充実しています。2023年11月、市民の皆さんの意見をお聴きしながら決定した「都市ブランド」のメッセージ、「この街で、わたしらしく生きる。長野市」。この言葉のとおり、いろいろなニーズにフィットする街だと思います。移住者から「やっぱり、イメージどおりだった」と思われ続けられるようにしていきたいと思っています。

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  都市ブランドメッセージ　提供元：長野市
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  自然と都市が交差する長野市
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  市街地から少し離れるだけでまったく違う風景に変わる

―どのような移住や子育て支援策がありますか。 荻原：子育て支援としては、首都圏で標準的に行っている支援は実施しています。その上で、市独自の支援として、子どもの体験や学びを応援する「みらいハッ！ケン」プロジェクトを、全国初の取り組みとして始めました。これは、市内のすべての小中学生に１人３万円分の電子ポイントを配布して、いろいろな学びや体験をしてもらう事業です。子育て支援とともに、子育て世代の移住にもつながると期待しています。

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  「みらいハッ！ケン」プロジェクト　提供元：長野市
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  さまざまな体験プログラムが充実　提供元：長野市
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  提供元：長野市
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  提供元：長野市
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  提供元：長野市
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  提供元：長野市
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  提供元：長野市

―隣接する須坂市に開業する大型商業施設による影響は。 荻原：現在（2024年12月時点）想定しているのが、須坂長野東IC付近の渋滞や、人手不足の顕在化です。長野市内の商店街では、消費者の流れが変わるのではとの声もありますが、プラスの面では、大変な集客力を持っているだけに、そこを訪れた人を長野市に誘導できれば、大きな商機になると思います。市としては、市内の経済団体等の皆様と対話をしながら、様々な施策に取り組んでいきます。 ―一方で、中山間地の活性化をどうお考えですか。 荻原：地域の皆さんには、地域の課題を迅速かつ効果的に解決するために、地域住民が「自分たちの地域は自分たちでつくる」という意識を持って活動する「住民自治協議会」を設立していただいております。ただ、特に中山間地域では高齢化や人手不足・担い手不足など、住民自治協議会が立ち上がって約２０年が経ち、現状に合わなくなってきた部分もあります。今後、行政との適切な役割分担の下、協働のパートナーである住民自治協議会の活動が、“持続可能な住民活動”となるよう支援していきます。

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  アーケードを備えた権堂商店街
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  善光寺周辺も個性的なお店が並ぶ

―長野冬季五輪のレガシーについては。 荻原：地方都市にこれほどの五輪施設が残っているのは、とても貴重なこと。維持費の負担はありますが、補修しながら有効活用し、市民にも愛されていると考えています。ソフトの面では、長野五輪を経験した人の９０%以上が「良かった」とアンケートで回答しています。また当時、市内の小中学校では、それぞれの学校が応援する国や地域を決め、その国・地域の文化や言語を学習したり、オリンピック選手や人々と交流することで多文化理解を深めるために「一校一国運動」を実施しました。それを今も続けている学校があり、世界とつながるきっかけになっています。先に述べた「みらいハッ！ケン」プロジェクトも、五輪レガシーの一つと考えています。

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  一校一国運動の当時の様子（エムウェーブ）
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  世界水準のスーケトリンクであるエムウェーブ
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  開会・閉会式会場だった南長野運動公園。通称「オリスタ」
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  体育館に生まれ変わったホワイトリング
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  多目的スポーツアリーナのビッグハット

―市長のようにオリンピアンが将来、生まれるといいですね。 荻原：このプロジェクトは、様々な分野の体験・学びができます。スポーツだけではなく、アートや学術・研究など、多様な方面で将来、活躍してくれる子どもが誕生してくれることを願っています。