明治から昭和初期にかけては製糸業が栄え、最近ではブドウやリンゴなどの果物の産地として知られる須坂市。機械・金属工業などの製造業、蔵の街並み、風光明媚な観光地もあり、農業、商工業がバランス良く発展している。2025年秋には、県内最大規模の大型商業施設が市郊外に開業し、さらなる躍進が期待される。須坂市とはどんなまちか、須坂市の三木正夫市長にお話を伺った。 個性的なショップ続々。蔵の街をぶらり散歩 ―大型商業施設が開店しますが影響は。 三木市長（以下・三木）：2025年秋、須坂長野東IC前に「イオンモール須坂」が開業します。長野市周辺では善光寺、戸隠、スノーモンキー（山ノ内町）に訪れていたインバウンドなどの訪問客の回遊性を更に高めることを期待しています。一方で、周辺道路の渋滞や人手不足への影響も心配されます。市街地では若い人たちが、個性的なカフェや雑貨店などを続々と開店しています。イオンモールを起点に、観光客などがSNSなどを通して市街地にあるこうしたショップに流れていくことを期待し、また、行政としても対策を練っていきたいと考えています。北信地域とイオンモール須坂が連携してWin-Winになると考えております。

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  2025年秋に開業予定の「イオンモール須坂」※写真はイメージ
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  駅前周辺
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  駅前本通り周辺
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  銀座通り周辺
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  金井原通り周辺
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  本町通り周辺
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  近年では宿泊、飲食など古民家を再生した店舗も増えている

―今、構想中のアイデア・対策はありますか。 三木：イオンモール側も「地域密着型」を打ち出していますので、お互いに協力できる点は多いと考えています。地元・須坂市の飲食店舗などが出店する「（仮称）須坂市ブース」の設置や、須坂創成高校の学生がショッピングモール正面に庭園を造る計画などがあります。須坂市のみだけでなく、長野県全体の魅力発信につながればうれしいですね。 ―須坂市は果物の産地としても有名ですね。 三木：「信州で一番ジューシーな街・須坂市」をうたっている通り、さまざまなフルーツが質・量ともに充実しています。果樹農家の努力によりブドウやリンゴを中心に、モモやナシ、プルーン、ブルーベリー...などが栽培されています。特にブドウは明治初期から栽培が始まりました。寒暖差や晴天率の高さなどの気候条件のほか、最先端の研究所である県果樹試験場があり、ここから「ナガノパープル」や「クイーンルージュ®」などのブドウの新品種が数々誕生しています。最近では、こうした地元・須坂産果物を使ったスイーツも人気で、「お菓子な街・須坂市」をキャッチフレーズにPRしています。

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  紫黒色に輝く大粒ぶどう「ナガノパープル」
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  赤紫色に輝く大粒ぶどう「クイーンルージュ®」
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  りんご三兄弟（左からシナノスイート、シナノゴールド、秋映）

須坂スイーツを支える、若手果樹農家とスイーツ職人 ―スイーツもおいしそうですね。 三木：私は、果物というと生食をイメージしますが、若い人は、瑞々しい感性で、個性豊かなスイーツや和菓子を作って、販売しています。著名なパティシエの鎧塚俊彦さんのおかげです。須坂市の果物の大ファンで、近年は毎年のように訪問していただいております。果樹農家さんと会ったり、スイーツの監修もしてくれて、若い人たちにとても励みになっています。市内には元気な洋・和菓子店が増えています。フルーツの旬時季（９〜１１月）にはスイーツスタンプラリーを実施して、須坂産の果物を使ったスイーツの魅力を存分に味わってもらっています。

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  須坂産の果物を使ったスイーツ
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―「蔵の街」とスイーツは「SNS映え」しそうですね。 三木：江戸時代には須坂藩主・堀家の陣屋町、明治から昭和初期にかけては製糸業で栄え、当時の重厚な蔵造りの建物が数多く残っています。蔵の建物をおしゃれなスイーツショップにリノベーションしているケースもあり、気軽に街歩きを楽しんでいただけます。街並みは扇状地の城下町という特質上、迷路のように入り組んでいますが、逆に「日本一の巨大迷路」として楽しんでいただけると思います。

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  旧製糸家建物や商家などの町並みが残されている
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  須坂巨大迷路攻略MAP

―須坂スイーツの担い手となる農家の現状は。 三木：高齢化は進んでいますが、元気で若い新規就農者が増え、新たな担い手になっています。支援としては、補助金に加えて、里親制度があります。先輩農家さんが親切丁寧に指導してくれることもあり、３年目で独立していきます。また、新規就農者や農業研修生の集まり「きじまるクラブ」があり、一流農家を目指して、切磋琢磨しています。初めての土地に来ても仲間がいて支え合える環境が心強いようです。 子どもが伸び伸びと。健康長寿の町として ―子育て世代についてはいかがでしょうか。 三木：子育て世代を中心に転入が転出を上回る、社会増が続いています。理由としては、子育てしやすい環境があると思います。保育園も多く、待機児童もゼロで、長野市の通勤圏として程よい距離感もいいのではないでしょうか。現在、多くの自治体で行っている標準的な経済支援は実施していますが、「子どもが伸び伸びと生活できること」が一番大切だと思っています。桜の名所100選の「臥竜公園」や、庭を開放した「オープンガーデン」など、花や緑を楽しめる公園・庭園、動物との触れ合いを大切にしたイベントが人気の「須坂市動物園」、日帰り温泉施設の「湯っ蔵んど」といった、家族でゆっくり過ごせる場所が多いこと。また、子育て支援を中心とした複合施設「bota」は、おしゃれな飲食店も入り、子育て世代が集まる場になっています。各種イベントも開催し、高齢者から子育て世代、学生・子どもが集い、世代を超えた交流が生まれ、いいつながりを生み出しています。

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  妊娠期から子育て期まで一貫した子育てサポート体制を整えている
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  桜の名所としても有名な臥竜公園
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  庭を開放した夏のオープンガーデン
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  大人も子どもも楽しめる須坂市動物園
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  県内最大級の日帰り天然温泉施設「湯っ蔵んど」
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  子育て支援を中心とした複合ビル「bota」

―「健康長寿の町」としても知られていますね。 三木：県内19市の中で、介護保険料は県内19市中最低額で、介護認定率は低いほうから4番目です。保健補導員発祥の地で、最近では保健師と病院の産婦人科や小児科、医療ソーシャルワーカーなどが連携する母子保健システム「須坂モデル」が、厚生労働大臣最優秀賞を受けました（令和元年）。多職種連携で妊娠期から産後まで切れ目ないサポートが、産後うつの予防や子どもへの虐待防止につながっています。あと、おいしい須坂フルーツを使ったスムージーも健康づくりに一役買っていると思います。

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  保険補導員制度発祥の地でもある須坂市
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  須坂モデル

―今後の課題はなんでしょうか。 三木：まず、空き家・空き地対策を見直したい。現在、立地や状態によっては空き家がすぐに埋まりますが、先祖代々の家を貸すには二の足を踏む人も多いようです。空き家の所有者と借りたい人の間に市や空き家対策に取り組む民間の団体等が入り、有効活用に向けて総合的に関われるような制度設計を考えています。豊富にある自然の景勝地の情報発信も課題です。空き家・空き地も活用した「移住・定住プロジェクト」に取り組みます。 ―具体的には。 三木：須坂市の上信越高原国立公園には国指定名勝 米子大瀑布があります。「不動滝」「権現滝」は日本の滝100選の名瀑です。台風19号災害で被災した歩道を、山岳ガイドの本場・ネパールのシェルパ（山岳ガイド）が整備を担ってくれて、歩きやすくなりました。今後、宿泊施設をつくる計画もあり、滞在できる名勝地にしたい。また、峰の原高原は地元有志らによる景観保全活動などにより、「未来に残したい草原の里100選」に選ばれました。クロスカントリーコースは高地トレーニングのメッカでもあり、駅伝の名門大学や強豪実業団チームの合宿地として利用されています。ペンションで提供される料理もとてもおいしいですので、ぜひ、訪れてほしいです。市内には、観光資源がたくさんあり、こうしたストーリーを含めて、発信していきます。

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  荘厳な光景に古くから信仰を集める米子大瀑布
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  日本で天空に1番近いペンションが点在する自然豊かな峰の原高原
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  峰の原高原はクロスカントリーの高地トレーニングのメッカ