「妻を説得して長野に移住したい兵庫県民がぼくです」どこか耳に残るフレーズでお馴染みの2人。実は、ブライアンこと村上大貴さんと、あんちゃんこと有華さんの夫婦。出身は兵庫県、その後千葉県で会社員生活をした後、約1年におよぶ日本一周の旅を経て、2024年4月に北アルプスの麓にある松川村へと移住した。全国47都道府県を周った末に、なぜ移住先に長野県を選んだのか。 日本一周の後、帰郷の予定が… 長野県が呼んでいる！ ―2024年4月に北安曇郡松川村に移住したそうですが、住み心地はいかがですか？ 大貴：最高です！　車中泊をしながら夫婦で日本一周をする中で、立ち寄った北アルプスエリアからの山々の眺望に圧倒されて、住みたいと思ったのが、移住のきっかけです。その景色を毎日眺めて生活できているので、大満足です！　天気が良ければ南アルプスの北岳まではっきりと見えますよ。 有華：移住するにあたっては不安もありましたが、今のところ私も満足しています。 ―車で日本一周ですか！ 大貴：はい。2023年の4月から約1年かけて、北は北海道の稚内から、南は沖縄県の波照間島まで周りました。この旅のためにカスタムのハイエースを購入して、車中泊で暮らす毎日が非日常のような生活。楽しかったですよ。旅を共にした車は愛着がわいて手放せずに、「家族」の一員として今も日常使いをしています。 有華：ちょうどコロナ禍の頃から日本一周をしているYouTuberの動画を見だして、気がついた時には自分たちも挑戦してみたいと思っていました。初めて訪れる場所は新しい発見の連続で、楽しかったです。各地の温泉も気持ちよかったですし…。

PREV NEXT

• 
  北海道の星空
• 
  波照間島の海

―なぜ、周ろうと思ったのですか。 大貴：以前から、全国47都道府県の名所・観光地などを周って、自分たちの住む日本のことをもっと深く知りたいと考えていました。ただ、勤めていた会社での新しい仕事も楽しく、なかなか実現できずにいました。ドタバタしていた会社のことが落ち着いてひと段落した時に、「挑戦するなら今しかない！」と考え、思い切って会社を辞めました。ちょうど30歳。ただ、日本一周を始める時には移住をするつもりなんてまったくなくて、旅が終わったら2人の実家のある兵庫県に帰るつもりでした。 ―それがなぜ、長野県に移住することになったのですか？ 大貴：日本各地を周る中で、素敵な景色の街だな、住み心地が良さそうだな、と思うところはいくつかありました。しかし実際に「ここに住んでみたい！」と強く思ったのは長野県が初めてで、特に北アルプスの眺望が素晴らしい安曇野エリアに惹かれました。しかしただ景色に惹かれただけではなく、ここにもエピソードがあって。旅の途中、紅葉した山々と八方池からの景色を見るために、白馬村の八方尾根を登山しました。麓は晴れてよい天気だったのですが、やはり山の上の天気は変わりやすく、八方池に着いた頃には曇って景色がまったく見れませんでした。そのまま2時間ほど粘りましたが景色は変わらず、諦めて下山をしようかという時に、突然さーっと雲が晴れました。凛とした空気の中、山頂に雪を頂いた白馬連山が池の水面に鏡のように映る姿は神秘的で、思わず息を飲みました。青空と雪の白、そこに紅葉した赤や黄色が入り混じった景色がまた素晴らしかった。これは「長野県に歓迎されている」と思いましたね。 有華：長野県を旅して以降、夫が「長野県に住みたい」と言い出したので、びっくりしました。日本一周が終わったら兵庫県に戻るものだと思っていたので。なので「兵庫県に帰りたい」との私の希望は伝えましたが、夫の意志も固く、二人で話し合いを重ねた結果、一緒に移住することになりました。

PREV NEXT

• 
  白馬八方池
• 
  八方尾根から見下ろした景色

縁あって、松川村に移住 ほどほどな田舎がちょうどいい ―最終的に移住先を松川村に決めた理由はなんですか？ 大貴：真っ先に考えた移住先は、安曇野市でした。景色が良いのはもちろんのこと、色々なお店がたくさん並んでいて利便性も高く、住み心地も良い。しかし発展しているが故に、やや自然が遠く感じられることが引っかかりました。せっかく移住するなら、もっと田んぼや畑などの自然に囲まれて、のどかな田舎暮らしをしてみたい。そう思って北上していった先で、松川村と出会いました。松川村は安曇野の原風景を残したのどかな自然が広がる街でありながら、役場や学校などの施設がコンパクトに集約されていて、とても暮らしやすい。さらにはタイミングよく地域おこし協力隊の募集もあり、選考の末、無事に採用されました。仕事が決まったことは移住を決断する上で大きかったですね。 有華：確かに。仕事探し、頑張ったよね。長野県は自然災害が比較的少ないことや、2人の実家がある兵庫県へのアクセスがいいことも理由ですね。また日本列島のほぼ中心にあるので、今後もしどこかに旅行したくなったときにも、車中泊でどこへでも行きやすいことも良かったです。 大貴：地域おこし協力隊の選考の中で、研修を兼ねた「お試し協力隊」を体験しました。そこでは仕事内容や地域の人との交流があったのですが、それを経験したことで「住める」と確信しました。やはり「住みたい」と「住める」は違いますから、実際に自分がその街に住んでいる姿がイメージできるかどうかは大切です。 有華：村ではあるけれど、人口も約9,600人と多く、地元の人たちもオープンに受け入れてくれる。車で10～20分も行けば、隣町の池田町や安曇野市にはスーパーや衣料品店、ファストフード店やおいしいラーメン屋さんなどの飲食店、あと、おそば屋さん…といった生活に必要な施設がそろっている利便性の良さも理由です。 大貴：松川村は移住者が多いためか、田舎特有の「濃い人間関係」というのも、それほど感じません。田舎あるあるなんでしょうか、野菜の差し入れがあったり、程よい距離感で私たちを温かく迎えてくれました。 有華：夏野菜、特にズッキーニはたくさんいただき、しばらくはズッキーニ祭り状態（笑）。村内を歩いていると、知らない子どもたちが元気にあいさつをしてくれます。少しずつですが知り合いもできて、心配だったご近所づきあいも順調、満足しています。

PREV NEXT

• 
  大好きなハルピンラーメン
• 

―日々の暮らしはいかがですか？ 大貴：平日は村役場で仕事をしています。総務課「噂の田舎へ案内係」で、移住・定住のためのPR活動や、空き家バンクを用いた空き家対策などが主な業務です。移住希望者の相談にのり、村内を案内したり、空き家を紹介したり…。自分が日本一周をした上で松川村を移住先に選んだことを話すと、皆さんとても興味深く聞いてくれます。自然も人もいい、大変住みやすい村なので、魅力的なこの地で色々なことにトライするチャレンジ精神旺盛な人にぜひ来てもらえるよう、日々頑張っています。 有華：私も村内で働ければと思っていましたが、なかなか見つからず、今は車で1時間ほどの松本市内で働いています。朝は渋滞があり、ちょっと大変ですが、車内から見える山々の風景には癒されています。 大貴：休日は、2人で県内あちこちに出掛けています。とにかく長野県のことが大好きなので、県内77市町村すべてを周ろうと計画中。将来的には、移住者初の長野県観光大使になりたいと考えていて、そのために「なつプロ｜100日後に長野県の観光大使に就任する移住者」という名前でSNSでの情報発信もしています。飯山市奈良沢神社の大天狗や松本市浅間温泉の松明祭りなど、地域に根差した迫力のあるお祭りがこんなにもあるのかと驚きました。辰野町や池田町のほたる祭りなど、自然豊かな長野県ならではの魅力も素敵です。 有華：あまりにもあちこち出掛けているので、意外とまだ自分たちの住む村内を周れていません(笑）。今後は時間を見つけて散策してみたいと思います。安曇野ちひろ公園は気持ちのいい公園ですよ。 「住みたい」きっかけを大事に 情報収集と体験で「住める」へ ―長野県に移住を考えている人にアドバイスを。 大貴：子育て環境や自然環境の良いところで暮らしたい、満員電車から逃れたい、直感的にここに住みたい！…など、「移住したい」と思うきっかけは人それぞれだと思います。そういった「移住したい原動力」は、ぜひ大切にしてほしいです。その上で、家（家賃）や仕事、生活費、周辺環境、人付き合い…など、実際に住めるかどうかをシミュレーションし、不安があれば実際に体験してみるのはいかがでしょうか。私は「北アルプスの麓に住みたい」という思いから始まり、自治体のHPやWebでの体験談などの情報収集、お試し住宅を通じた生活体験や地元の人の話を聞くことを通じて不安を解消し、「住みたい」から「住める」へと気持ちが変わっていきました。 有華：夫の細かなデータ収集とプレゼンテーションによって、私が抱いていた不安点もなんとかなりそうと思えるようになりました。ただ、今の段階では（2024年11月現在）、長野県の冬を経験していないので、冬の光熱費や水道管の凍結、車の運転…などまだ心配は残っていますが、地元の人の知恵を借りながら、過ごしていけそうです。 大貴：移住と言うと、「死ぬまで住み続けられるの」とか「環境が合わなかったらどうするの」なんてことも聞かれますが、「移住」と「定住」は別物だと考えています。移住したからといって、必ずしもその地に住み続けなければならないわけではないので、もっと気軽に「引越しの延長線」くらいに考えても良いのではないでしょうか。その上で気に入れば定住すれば良いわけで。ただ、情報収集はマメに。移住希望者が移住先を選べるのと同じように、地域の人も移住者のことを見ています。景色ひとつとっても、その景色を守ってきた地域の人たちがいるわけですから、そういったことに感謝をしつつ、地域の一員となるつもりで移住することが大切だと思います。そのために情報収集をしっかりして、「住める」感覚を持っていただきたいです。 村上ご夫妻のYouTubeはコチラ