大火復興のシンボル りんご並木と裏界線 美しき城下町を襲った歴史的大火 長野県南部に位置し、古来より東西交通の要衝として繁栄した飯田市。中でも天竜川の河岸段丘上に広がる中心市街地は「丘の上」と呼ばれ、飯田城の城下町として長く歴史を刻んできたエリアである。 建保年間の築城以降、戦国時代末~安土桃山時代にかけては領主が目まぐるしく変化するなど、時代に翻弄され続けた飯田城。その間城下では、商家の町屋を守るように周囲に武家屋敷が建てられ、外側に寺院が配されるという独特の城下町が形成されていった。中でも室町時代に京極高知氏が築いたとされる碁盤目状の街路は整然とした風情を伴い、後世に至るまで「信州の小京都」と讃えられるほどの美しさを誇った。しかし、そんな街並みを襲ったのが1947(昭和22)年4月に発生した「飯田の大火」である。

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  提供：下伊那教育会
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現在の飯田動物園付近から出火した炎は、不幸な気象条件も重なって各所に飛び火による火災を生じ、短時間のうちに街全体を焼き尽くした。被災人数は1万8000人、損害額は当時の金額で推定15億円とされ、中心市街地の約7割を焼失する歴史的大惨事へと発展。碁盤目状の街並みにより建物が密集していたことも火災が広がった要因のひとつとされ、江戸情緒をたたえた「信州の小京都」はこの時、惜しまれつつも姿を消した。

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  大火の際に避難や消防通路がなかった反省から設置された裏界線
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  復興のシンボルであったりんご並木

復興で蘇ったまちは 更なる進化を遂げていく 復興を原点に
進化を続けるまちづくり 一面の焼け野原となった飯田市では、翌年から復興に向けた取り組みが始まった。現在の碁盤目状の街並みはこの復興によるもので、室町時代に築かれた街割りがベースになっているという。「防災モデル都市」を目標に、東西に走る「並木通り」と南北に走る「通り町」の2本の防火帯道路を交差するかたちで、市街地を四分割するように設けられた。たとえ火災が燃え広がったとしても、さらに建物と建物の間には「裏界線(りかいせん)」と呼ばれる避難消火のための通路も配された。これは家や隣接する土地の幅1mずつを融通しあって2mの道路を作り上げるという全国的にも珍しい公衆用道路で、普段は生活道路として街に息づき、独特の趣を感じさせる新たな観光スポットとしても注目を集めている。また、大火の6年後には街の復興を願う飯田東中学校生徒が「並木通り」にりんごの木を植樹。時を経て「飯田のりんご並木」として全国的にも知られる街のシンボルへと進化を遂げた。 近年はスタイリッシュな店舗や商業ビルが増え、文化の創出拠点としても賑わいを見せる「丘の上」。さらに官民協働で中心市街地の活性化に取り組む「りんご並木横丁」では、古い空き店舗などを活用して新たな空間をつくり、ニーズに合わせて低廉で貸し出して経営者の支援を行なう活動が進められた。りんご並木や裏界線を動線に、人々が周遊できるレトロモダンな街並みへと変化していった。 大火の復興に端を発したまちづくりは、歴史的資産を残しつつも新たな魅力をたたえた街の創造へと繋がった。その想いは脈々と受け継がれ、次世代へ向けてさらなる進化を続けていくに違いない。

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［飯田のレジェンド_大火からの復興］ 戦後間もない1947（昭和22）年4月20日、中心市街地の約7割を焼失する大火が発生。現在の飯田市 立動物園付近で出火した炎は、たちまち燃え広がり、飯田のまちを焼き尽くした。焼け野原となりながらも、翌年からは復興が始まり、防火帯としてまちを4分割する幅員30mの道路が2本整備されたほか、市民の協力により幅員2mの通路がつくられた。防火帯道路の緑地帯には、のちに地元中学生により、りんごの木が植樹され復興のシンボルとなった。