武田信玄が駆け抜けた信州 戦国最強の騎馬隊を率い、戦国の世を駆け抜けた武田信玄。甲斐一国を治める守護大名の家に生まれ、弟の信繁を寵愛した父を追放して家督を継いだ。生涯において自らの国で戦ったことはほとんどなく、外へ攻め込んで領地を広げた。本国甲斐に次いで、領国経営の中心として支配を固めた信州。信玄の足跡を巡ることで戦国時代の信州が見えてくる。 history _信州で戦い、信州で果てた信玄 初陣の海ノ口城攻めをはじめ、武田信玄の主な戦いの舞台となったのは信州だった。着々と信濃侵攻を進めるが、村上義清との2度の戦いで大敗を喫す。そんな村上義清も真田幸隆に謀略によって城を奪われ、越後の上杉家へと落ちていった。そうして信濃の領地を広げる武田信玄と、信濃を追われた豪族の要請を受けた上杉謙信とが戦ったのが、5回に及んだ川中島の戦いだった。なかでも4回目の戦いでは、両将が一騎打ちになったと伝えられているほどの激戦だった。その後の信玄は南へ進路を変える。しかし、三河に攻め込んだときに持病が悪化し、甲斐に撤退する途中に亡くなった。遺言で遺骸を諏訪湖に沈めるよう言ったというが、どこに葬られたかは定かではない。 ①川中島古戦場史跡公園 武田軍と上杉軍が信濃の覇権をかけて5度にわたる合戦を繰り広げた場所で、壮絶な戦いを象徴する三太刀七太刀の碑が建っている。周辺には、討ち死にした信玄の弟の典厩信繁を葬った典厩塚（後の典厩寺）も。 ②瀬沢合戦跡 天文11（1542）2月、信濃の小笠原・諏訪・村上・木曽の4大将が武田信玄を攻めようと甲信境の瀬沢に陣取った。この動きを察知していた武田軍は信濃勢の不意をついて信濃方1621人を討ち取り大勝したが、味方にも多数の死傷者を出した。 ③上田原古戦場 北信濃の武将・村上義清と、北信濃侵攻を目指す信玄とが最初に戦った場所。武田軍は大敗を喫し、板垣信方・甘利虎泰など多くの将兵を失った。この戦いで負傷した信玄は湯村温泉で30日間の湯治を行ったという。 ④砥石城 上田原の戦いの大敗の翌年、再び信玄が大敗を喫した「砥石くずれ」で名高い村上義清の山城。その後、真田幸隆の謀略により落城、のちに真田昌幸の居城となる。連郭式山城で4つの山城からなる。 ■謎に包まれた信玄の埋葬地… ①諏訪湖 諏訪湖には武田信玄が埋葬されたという伝説が残り、黒澤明の映画「影武者」には信玄が家臣たちによって諏訪湖に葬られるシーンが出てくる。また、電波探知機の調査でも、湖底に菱形（武田家の家紋）をした影が見つかったという。 ②長岳寺 京をめざして兵を進めていた武田信玄は、病に冒されて甲斐へ戻る途中、元亀4（1573）年、駒場の山中で亡くなった。その死を隠すため、信玄の義理の兄弟が住職を務めていた長岳寺に遺骸が運ばれ、火葬にされたといわれている。 ③龍雲寺 信州を訪れる信玄が必ず戦勝祈願に詣でた寺。信玄の死を秘すためにここに葬られたともいわれ、本堂奥の信玄公霊廟には昭和6（1931）年に発掘された信玄の遺骨と副葬品と伝えられるものが納められている。