長野県を彩る麗しの桜たち ようやく桜の便りが届いたこの頃。蕾が次々と弾ける音が聞こえるほど、長野県の桜は一気に咲き競う。心地よい春風に誘われて、休日に桜の名所を巡ってみてはいかがだろう。美しく咲き誇る桜が私たちを華やかな世界へ導いてくれるはず。今回は長野県の桜の名所を厳選してご紹介。 １.高遠城址公園（伊那市） 約1,500本もの桜が咲き乱れ、天下第一と謳われる高遠城址公園の桜。濃いピンク色が特徴の国有種である「タカトオコヒガンザクラ」で、県の天然記念物にも指定されている。高遠はもともと天守閣を持たない城で、明治初期に廃城となったため、当時の建物は公園入口の進徳館のみ。ほかは解体・移築されて残っていない。しかし、この城にはそれを補ってあまりあるほどの歴史が秘められている。高遠城を舞台とした数々の歴史に思いを馳せ、桜の風景を鑑賞してみては。 ２.高島公園（諏訪市） 1970（昭和45）年に再建された天守閣を背景に、ソメイヨシノやシダレザクラ、ヤエザクラなどの異なる品種の桜が咲き誇る。城内には池や芝生があり、桜の時期にはゆっくりと桜を愛でる人々でひときわ賑わう。 ３.天龍峡（飯田市） 岩を砕く激流と高い断崖、岩壁の景観を賞して命名された天龍峡。淡いピンクの花が鮮やかに映える桜は、つつじ橋からでも川下りの舟に乗って見るもいい。天龍峡が優しい雰囲気に包まれる。薄紫色のミツバツツジも咲く。 ４.坂戸峡（中川村） 天竜川の川べりに連なる桜並木は、国道153号線のドライブがてらに楽しめる名所。令和２年度に国の重要文化財に指定された坂戸橋を覆うように咲く薄紅色の花が早春の田園風景を彩り、桜のトンネルが通る人の目を楽しませてくれる。 ５.大西公園（大鹿村） 130種約3000本が咲き乱れる南信州屈指の名所。1961年の大水害の後、有志による植え付けをきっかけに、村を挙げての植樹が行われた場所でもある。残雪の南アルプス赤石岳と小渋川の清流、風光明媚な山村の風景も味わえる。 ６.国宝 松本城（松本市） 春、桜がいっせいに咲き誇った松本城は、ほかの季節とはまた違った姿を見せる。豊臣秀吉が築城した大阪城にならい、黒塗りの板張りで統一された城の黒さが、いつもより少し和らいで見えるのは、周囲を彩る桜のせいかもしれない。松本城公園に植えられた桜は、ソメイヨシノを中心に約300本。絢爛豪華という言葉がぴたりと当てはまる。夜になるとライトアップされて幻想的な姿を映す松本城。戦国の歴史とともに、美しい桜を満喫できる。 ８.大町公園（大町市） 大町市街地を見下ろす東の山の中腹、大町山岳博物館前にある公園。園内にはソメイヨシノやオオヤマザクラなどの桜が咲き、西に聳える残雪の北アルプスとのコラボレーションが素晴らしい。近くには桜並木の続く観光道路もある。 ９.弘法山古墳（松本市） 約4,000本もの桜が山全体を薄紅色に染める絶景スポット。松本平を一望する弘法山古墳は3世紀末に造られた、前方後方墳。頂上まで足を延ばせば、桜越しに北アルプスの山々が望める。遊歩道はまさに桜のトンネルだ。 １０.陸郷の山桜（池田町） 池田町の東山に位置する陸郷地区。「西の吉野、東の陸郷」と呼ばれる山桜の名所。小鳥たちが桜の実をついばみ咲かせてくれたという一目数千本ともいわれる山桜。同時期に咲く菜の花とのコラボレーションも素晴らしい。 １１.上田城跡公園（上田市） 「表裏比興の者」（くわせ者）と呼ばれた知将・真田昌幸が築城し、大軍の徳川勢をわずかな手勢で2度も退けた戦歴がある上田城。現在は城跡公園となっており、昌幸の次男で「日本一の兵（つわもの）」と称された名将・幸村の人気も相まって多くの人々が訪れる。桜の時期には樹齢100年のケヤキに沿って植えられた1000本の桜並木が迎えてくれる。ソメイヨシノや東虎口櫓門脇のシダレザクラなど、開花時期の異なるさまざまな桜が咲き乱れ、乱世を生き抜いた歴史舞台を見事な桜色に埋め尽くす。日本夜景遺産に認定された千本桜ライトアップも見もの。 １２.東御中央公園（東御市） 東部湯の丸IC出口近くにあり、芝生公園とも呼ばれる東御中央公園。中心部には芝生広場、ハーブ園やロックガーデン、遊具もあり、家族連れや地元の方々にも親しまれている。芝生の周りを取り囲むように咲く桜を愛でながらの散策が心地いい。 １３.雪窓公園（御代田町） 浅間山を望む地に建設された、敷地面積5.5万㎡の広大な雪窓公園は、多目的グランドや芝生広場などが整備された町民憩いの場。園内には数多くの桜が植えられており、桜の花が咲く時期には、花びらが舞う華やかな風景が広がる。 １４.小諸城址 懐古園（小諸市） 1880（明治13）年に小諸城本丸跡に懐古神社を祀ったことからこの名が付いた。春になると周辺と合わせて500本のソメイヨシノ、ヒガンザクラ、ヤエザクラ、シダレザクラなどが咲き、桜の名所として名高い。ここでしか見られないという小諸のヤエベニシダレもある。「日本のさくら名所100選」にも選ばれており、苔むした石垣と桜のコントラストが風情ある情景を醸している。園内には藤村記念館や小山敬三美術館、動物園、遊園地などが併設されている。 １５.鶴岡城跡 五稜郭（佐久市） 龍岡城は周囲に星型の構造と、お堀に沿うように桜並木が形成された、国指定の史跡。北海道の函館と並び、わが国に残るふたつの五稜郭のひとつ。江戸末期に築城された幕府最後の城で、明治維新にともないわずか5年で取り壊された。 １６.臥竜公園（須坂市） 日比谷公園などを設計した本多静六・林学博士が担当し、1931（昭和6）年に市民の健康第一を掲げる自然園をコンセプトに造られた臥竜公園。地元有志による「臥竜公園桜守りの会」が保護・PRに尽力する桜は「さくら名所100選」にも選定されており、池の周りに160本、臥竜公園全体で約600本植えられている。ソメイヨシノを中心にヤエザクラまで長い期間楽しめ、ボートに乗りながらの花見が楽しめるのも魅力。満開時の夜間には、ライトアップされた桜が池に映し出され、幻想的な雰囲気に包まれる。 １７.戸倉宿キティーパーク（千曲市） 1993（平成6）年に開設。高さ8mの大きな「千曲天狗」があることから天狗公園の名で親しまれている公園。高台にあるため抜群の眺望を楽しめる。東山の斜面に広がる園内には、約500本のソメイヨシノが可憐な花を咲かせる。 １８.飯山城址公園（飯山市） 戦国時代、武田信玄に備え上杉謙信が建てた飯山城。本丸跡、二の丸跡、三の丸跡にオオヤマザクラやソメイヨシノが植えられ、愛らしい花が咲き揃う。二の丸広場からは千曲川の雄大な流れと国道沿いの菜の花、残雪の山並みが望める。 １９.松代城跡（長野市） 川中島の戦いの際、武田信玄の拠点として築かれた松代城。以前は石垣を残すだけであったが、現在は太鼓門などが復元され、国の史跡にも指定される城跡をソメイヨシノがピンク色に染める。石垣に映える桜に気品が感じられる。 ２０.城山公園（長野市） 善光寺境内の東側にあり、美術館や動物園が点在する城山公園。一帯に咲き競う約470本のソメイヨシノが桜のトンネルとなり人々を迎える。子ども遊具などが充実する広々とした芝生広場をはじめ、市民の憩いの場が薄紅色に染まる。